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大阪高等裁判所 昭和25年(う)360号 判決 1950年11月08日

被告人

片山為治郎

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役壹年六月及び罰金五万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金二百五十円を一日の割合で換算した期間被告人を労役場に留置する。

原審の訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人十川寛之助の控訴趣意第十点について。

原審第六回及び第七回公判調書の所論摘録個所にそれぞれ摘録の文言が挿入せられており、その上方欄外に各一行挿入とのみ記載し、加えた文字の字数を明かに示しておらぬことは所論のとおりであるが、元来刑事訴訟規則第五九条は文書の真正保持を期するための規定であつて、文書の内容に変更の加えられた場合にその変更が作成権限ある者によつて為されたものに外ならぬことを明かにし、疑を挿む余地のないように、且又通常加除せられる文字は寧ろ少数であるから一応加除された文字の数を記載するように規定せられておるのであるが、本件のように一行の文字全部を加えた場合或はこれを削つた場合の如く新に加えられた文字と従前の文字との限界、或は削除された文字と残存する文字との限界が判然識別せられて疑念を挿む余地のない場合には一行挿入或は一行削除とのみ記載し、字数を示さなくとも妨げないものと解せられるばかりでなく、仮にこの解釈が許されないとしても所論にかかる挿入文字はその筆蹟、墨色、乃至文章の接続状態から推して、公判調書の作成権利者によつて作られた真成な文書の一部を成すものと認められ、有効であるといわねばならないからこの部分の効力を否定しその記載を無視することを前提として原審の訴訟手続が手続法規に違反し不法であると断ずる論旨は理由がない。

(註 本件は擬律錯誤により破棄自判)

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